土地を貸している方、借りている方いると思いますが、お互いにトラブルに巻き込まれることも少なくないと思います。ということで、今回は増改築等禁止特約や増改築の基準、判例などを紹介していきたいと思います。
増改築禁止特約は何?
一般的に、借地契約(建物所有を目的とする土地の賃貸借契約または、建物所有を目的とする地上権の設定契約のこと)では、借地上の建物を地主に無断で増改築をしてはいけないという条項、いわゆる増改築禁止特約が入っています。
増改築の基準は?
〇建築
建築物を新築、増築、改築、移転すること
〇増築
既存の建物の床面積を増加させること
〇改築
建築物の全部もしくは一部を除去、またはこれらの部分が災害などによって消失したあと、引き続いて用途、規模、構造の著しく異ならないものを建てること
〇大規模の修繕
建築物の主要構造部分の一種以上について行う過半の修繕のこと
〇主要構造部
柱や床、壁、はり、屋根、階段、屋根のことをいい、建築物の構造上重要ではない付け柱や間柱、ひさし、小階段などその他これらに類する建築物の部分を除くもの
この定義からすると今ある建物を取り壊し、全く同じものを建築することでも改築になります。また、モルタル(セメントと水を練り混ぜて作る建築材料)の壁をはがしてサイディングボードを張ることも改築になります。しかし、モルタル上のペンキを塗る行為は改築にはなりません。
判例
〇事例
貸主と借主は貸主が所有する土地で建物を所有する目的で、期間20年、借地上の建物について、貸主の許可なく増改築・改築大修繕などを行った場合には、貸主は無催告解除ができる特約付きの借地契約を締結しました。
しかし、借主は貸主の許可なく壁と屋根の補修工事をしました。そこで本件借地契約を解除するという旨の意志表示をし、建物収去土地明け渡しを求めて訴えを起こしました。
〇判決
裁判所は、借主が貸主に無断で行った本件工事について信頼関係を破壊するものではないとして解除は認めず、請求を棄却しました。本件工事はいずれも本件建物の駆体や壁、はりなどの建物の構造を支える骨組みの取替えは行っておらず、雨漏りの補修や普段の利用上にとどまっています。
借地契約の特約において、増新築や改築大修繕を行うときは貸主の許諾を必要とすると定めている趣旨は、増改築工事により本件建物の耐用年数が大幅に延長されて、借地権の存続期間に影響を及ぼすことを避ける点にあると解釈されますが、認定事実によると、本件工事は修繕を行った建物の耐用年数を大幅に延長させ、借地権の存続期間に及ぼすものではないとされ、貸主が行った借地契約の解除は無効になりました。
まとめ
今回は増改築等禁止特約について紹介しました。自分がこのような立場になったときに是非参考にしてみてください。