いらない土地を親が所有しているという場合には、相続が発生する前に売却したり、法人
や自治体に寄付(譲渡)したりしてもらいたいものですよね。
しかし、使い道のない土地というのは買手や受け取り手を見つけるのが難しいものです。
結局手放すことができないまま、相続が発生するということになりかねません。
いらない土地が遺産に含まれる場合には、相続放棄について検討しましょう。ここでは、
相続放棄の概要やその方法、また相続放棄するなら知っておきたい注意点についてご紹介
します。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続する遺産のすべてを放棄することをいいます。
相続される遺産は、現金や土地といったものだけではありません。親が持っていた借金や
負債といったものも含まれます。つまり大きな借金などを亡くなった親がしていた場合、
借金も一緒に抱え込むことになるということです。
相続放棄をすることで、そのような事態に陥るのを避けることができます。
相続放棄の方法
相続放棄するには、相続が開始した直後から3か月以内に「相続放棄申述書」を家庭裁判所に提出するなど、所定の手続きをする必要があります。
相続放棄をするための手順を見ていきましょう。
【相続放棄の手順】
1.相続放棄申述書を作成する
相続放棄申述書は、裁判所のホームページでその様式をプリントアウトすることができます。書式の記入例などもホームページで確認できますので、参考にして書類を完成させましょう。
2.家庭裁判所に必要書類を提出する(必要書類については後述)
3.家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届き、相続放棄完了
手順自体はそれほど難しいものではありません。
では次に、相続放棄の申請に必要な書類をご紹介します。
【相続放棄の必要書類】
・相続放棄申述書
・相続放棄を申請する人の戸籍謄本
・被相続人(故人)の除籍謄本や住民票の除票
以上の書類が必要になりますので、相続放棄をする場合は、相続開始後速やかに揃えるようにしましょう。
【相続放棄にかかる費用】
相続放棄には費用がいくらかの費用がかかります。
相続放棄申述書に貼付する印紙代:800円
戸籍謄本:450円
除籍謄本(被相続人):750円
住民票(被相続人):約300円(自治体によって多少前後します)
司法書士、弁護士代(司法書士などに代行を依頼した場合):約3万円
相続放棄をするなら知っておきたい注意点
親の借金やいらない土地などを相続することを避ける相続放棄ですが、
実際に放棄をするのであれば、知っておくべき注意点が数点あります。
・遺産のすべてを放棄しなければならない
相続放棄をすると、「相続される遺産のすべてを放棄」することになります。
遺産に現金などの正の遺産も含まれる場合、いらない土地があるからと相続放棄を選択すると、
それら正の遺産も放棄しなくてはならなくなることを覚えておきましょう。
ただし、相続の段階では正の遺産が多くても、いらない土地を相続した後に支払う
固定資産税や管理費用を加味すると結局マイナスになってしまうこともあります。
相続放棄をする際は、正の遺産と負の遺産を比較し、相続すべきかどうかを
じっくり検討したうえで行うようにしましょう。
・相続放棄をしても土地の管理義務はある
土地を相続放棄したとしても、土地の管理義務が自動的になくなるわけでないことも、
覚えておかなくてはいけないポイントです。相続放棄をしても、土地に対する注意義務や管理義務は残り、
相続人になるはずだった方が監理していかなくていけません。
土地の管理義務は、相続財産管理人を選定するまで残ります。相続財産管理人は、
利害関係者や検察官が家庭裁判所に請求することで選定され、選定されることで、
相続人になるはずだった方から管理義務がなくなるのです。相続放棄をした後は、
管理人の選定請求を忘れないようにしましょう。
・相続放棄には順番がある
相続放棄は、相続が開始されるまで実施することはできません。
つまり、被相続人が亡くなるまで、相続放棄に関わる手続きは行えないということです。
また、相続人の中には順位があります。被相続人の配偶者がその一番上に位置し、
次に子ども、両親と続きます。
配偶者(常に法定相続人)
以下、相続人の順位
第1順位:子ども
第2順位:両親
第3順位:兄弟姉妹
相続放棄をすることで、相続権が下の順位に移動していきます。最初に配偶者が行い、
次に子ども、その次に両親ということです。
相続権が移動しないと、順位が下の相続人たちは相続放棄をすることができませんので覚えておきましょう。
まとめ
いらない土地は負の遺産になることがあります。相続財産の中にいらない土地が含まれている場合は、他の相続財産についてしっかり確認した上で、相続放棄を検討するようにしましょう。