高齢化社会と言われるこんにちですが、遺産相続をめぐるトラブルは増加傾向にあります。故人もやるせない想いでしょうが、トラブルを望む遺族もごく稀なことでしょう。
では、どうして?トラブルはおきるのでしょうか。このコラムを通じて、相続をうける予定の方は何に注意しなければいけないかの参考にしていただければ幸いです。
さて、今回ご紹介する相続トラブルは、相続をうけた兄弟の3人間で紛争になります。当事者のおひとりからインタビューにお応えいただけましたので、ご覧ください。
川崎市のTと申します。
私はその当時、都内で夫と息子3人で暮らしていました。その頃から川崎に住む母の体調が悪くなったことから介護が必要になりました。すでに、父は他界しておりましたので、介護について子供たちで話し合うことになりました。
私は3人兄弟の末っ子になりますが、2人の兄たちは何かと理由を付けて協力してくれませんでした。仕方なくといっては母に申し訳ありませんが、介護のために夫と子供たちに了承してもらって川崎市に移り住む事にしました。
私自身は、当時勤務していた職場を退職して、母の介護に専念することになりました。非協力的であった兄たちでしたが、母への介護について、ありがとうと感謝されてはいました。
そんな経緯もあったので、書面にはおこしませんでしたが母が遺す資産は私に委ねるといった流れになっていました。何よりも母が介護をしてくれる事にとても感謝してくれて、このまま安心して残りの人生を過ごして欲しいと思っておりました。
介護を始めてから15年が過ぎた頃だったでしょうか、母は他界しました。すると兄たちが遺産相続に不満をいってくるようになったのです。理由は不動産など無縁だと思っていた母が、評価額にして約6000万円ほどの区分マンションを所有していたことが発覚したからです。
兄たちは知る由もなかったと思いますが、私自身も母宛の郵便物などは開封せずに放置していたこともあったので、気付くことができなかったのです。また、税金といった支払いは、自分でやっていたことも後に知ることになったのです。
相続するような遺産などないと思い込んでいた兄たちからすると、寝耳に水の話だったのではないでしょうか。すべてが反故になり、正式に相続分を3分割したいと主張してきました。私の介護の苦労など全く意に介さなくなってしまいました。
お金の為に介護をしたわけではないのですが、大きな負担でした。私の家族たちにも少なからず、犠牲になってもらってやってきたので、とても切ない想いになりました。当時を振り返るとだいぶ感情的に兄たちとは対立しました。このままではいけないということで、あすか地所さんにご相談させていただきました。
結局、不動産を売却した現金を等分することになったわけですが、とても納得したうえで、一連のトラブルを終えることができました。最後まであすかさんは、誠実に兄たちとの間に入ってくれました。ただただ、血の繋がった兄弟が目の色を変えて、争ったことが残念で仕方ありません。それからというと、兄弟間の繋がりは消え去ってしまい、未だに会話をする事はありません。
もしもの事に備えて、母の意識がしっかりしているときに資産を整理しておけば、こんな事態にはならなかったのではないかと後悔ばかりです。いくら血を分けた兄弟といえ、お金のことになると一変するという話を聞いていましたが、まさか私が直面するとは思ってもいませんでした。これをご覧になった方々が相続の事で争いが起きないことを願って止みません。
それでは、トラブルが起きてしまった問題は何だったのでしょうか?
ズバリ!それはお母様の資産を生前に把握しておくべきでした。
もしも、介護が必要になった当時、区分マンションの存在を把握していれば、兄たちは同じ行動をとったでしょうか!?生前に売却した現金を利用したストーリーも考えられたのではないでしょうか。
余談となりますが・・・
寄与分の協議という制度があります。この制度は、被相続人の生前に、その財産の維持や増加に影響するような貢献をした相続人がいる場合、他の相続人との間の不公平を是正するために設けられた制度です。協議で決めた寄与分や金額は原則、書面に残します。
寄与分の条件は、通常の介護を行っているだけでは認められず、特別に貢献したと認められなければいけません。たとえば、特別の寄与という条件があり、10年以上にわたり被相続人の事業の手伝いをした場合や、生活の面倒を見ていた場合とされています。
それでは、今回のケースで法定相続した場合と寄与分の協議がある場合で、どのような違いが出てくれるのでしょうかみていきましょう。
■ 法定相続分した場合
被相続人である母の不動産売却価格が6000万円
長 男 2000万円
次 男 2000万円
長 女 2000万円
つづいて、
■ 寄与分を協議によって3000万円とした場合
被相続人である母の不動産売却価格が6000万円
6000万円-3000万円(寄与分)=3000万円
長 男 1000万円
次 男 1000万円
長 女(介護者) 1000万円 + 3000万円(寄与分) = 4000万円
協議の金額については、相続で決めることになりますが、今回の仮定条件のケースでは、長女の相続分は、実に倍の開きが確認できます。お母様の生前に相続人である3人が、冷静な話し合いの場を設けることで、回避できたトラブルだったのかもしれません。
もしも、あなたが不動産をめぐる問題に不安を感じたら、まずはお気軽にご相談ください。あすか地所では、弁護士・司法書士・税理士と、それぞれ専属顧問体制を敷き、不動産売買以外の視点からもあなたのサポートをさせていただきます。