高齢化社会と言われるこんにちですが、遺産相続をめぐるトラブルは増加傾向にあります。故人もやるせない想いでしょうが、トラブルを望む遺族もごく稀なことでしょう。では、どうして?トラブルはおきるのでしょうか。このコラムを通じて、相続をうける予定の方は何に注意しなければいけないかの参考にしていただければ幸いです。
さて、今回ご紹介する相続トラブルは、他界した父の遺産をめぐる長男と長女によるトラブルです。
当事者のおひとりであるご長男の方からインタビューにお応えいただけましたので、ご覧ください。
はじめまして。Sと申します。
父は、私がいうのもなんですが、一代で資産を築いたやり手の経営者でした。特に不動産投資には、積極的に取り組んでいました。ところが、バブル崩壊を機に所有していた不動産価格は下落していきます。購入したすべての不動産は、担保評価を割れ込む始末となり、経営を圧迫する状態でした。なかでも会社の最盛期に建てた自社ビルの負債は、深刻な問題でした。
厳しい状況のなか親族にも弱いところを一切見せずに経営を立て直そうと取り組む父の姿を想像すると目頭が熱くなりました。結局、父による会社再建は、実現することなく遺産相続の家族会を迎えることになりました。
相続人は、私を含め母と姉による三人でした。
姉は、「実家を売ってしまえばいいじゃない。お金を作って、その分を私やお母さんにわけてちょうだい。」と自分の相続分を主張しました。バブルの良い時代に、結婚して家を出た姉にとって、父が遺してくれた財産が、会社と自宅不動産と預金800万円ということが信じられないといった様子でした。
晩年の父の姿を思い出すと、身勝手な姉の主張に憤りを感じました。
「姉さん、そうはいっても自宅は母さんと俺たちが住んでいるんだから、すぐ売ることはできないよ!」思わず語気が荒くなってしまいました。自重するかと思った姉でしたが、それであればと、不動産をはじめとした会社資産を処分した現金による分配を主張してきたんです。
「このままでは会社も家もバラバラになってしまう…」
あすか地所さんにご相談させていただいたのは、父が残してくれた会社をつぶすわけにはいかないと、会社再建に取り組み始めたそんな頃でした。
所有している不動産は、会社の借入金の担保にはいっていることなどがわかってきました。想像以上に会社の財務状況は危機的でした。一方で、借入をしている金融機関からは、会社株式を相続人で分散する相続を嫌いました。相続予定の親族がこれだけ、意思統一を図れないわけですから当然だと思います。
あすかさんにもサポートしてもらい、金融機関との打合せをしましたが、不動産を売りたいというのであれば、借入している金額について、私と姉と母が連帯保証人になることが条件になりました。これにはさすがの姉も困った様子で、首を縦にはふれませんでした。
その後も何度となく金融機関と姉との打合せを行いました。結局、会社が所有する一部の不動産の売却を認めてもらいました。姉の主張に沿うかたちで、サポートしていただいたあすかさんには、本当に感謝しています。私はというと、残すべき会社と実家を残すことができてとても満足しています。
ズバリ!トラブルの原因は、遺産についての債務を把握していなかったことです。今回のケースでは、相続対象の資産に債権が付着していたことです。債権者である金融機関の意向との交通整理に依存するところでしたが、債務超過となっていなかったことが不幸中の幸いでした。もしも、債務超過の状況を把握せずに相続していたと思うとゾッとしますね。
遺産相続には期間があります。相続税の申告は相続開始後10か月以内に申告することが原則となります。一方、遺産を相続しない場合、相続を知ってから3か月以内に相続放棄の申述を家庭裁判所に行わなければいけません。もしも、なんの申述もしなかった場合は、自動的に単純承認となり、借金や負債を含むすべての遺産を受け継ぐことになりますので、細心の注意が必要です。
もしも、あなたが不動産をめぐる問題に不安を感じたら、まずはお気軽にご相談ください。あすか地所では、弁護士・司法書士・税理士と、それぞれ専属顧問体制を敷き、不動産売買以外の視点からもあなたのサポートをさせていただきます。