こんな悩みの人にぴったり
◎借地の上に店舗や住居を構えている人
◎現在、家族から土地を借りている人
◎現在、家族や親族に土地を貸している人
もくじ
1.事案の概要
2.裁判事例
3.裁判所の判決
4.まとめ
1.事案の概要
今回ご紹介する裁判事例は、被相続人と請求人の妻との土地の賃貸という身近に起こりうる土地の賃貸借において、借地権が認められるのかが争われたものです。
借地権とは、第三者の土地を借りて、その土地に自己所有の建物を建てられる権利のことです。
今回の場合、借地権が認められると、この土地は「更地」として評価されるのではなく「底地」として評価されることになります。そのため、評価額は相当減額されることになってしまいます。
借地権が認められなかった場合は、「更地」として評価されることになりますので、逆に評価額は相当アップすることになるでしょう。
2.裁判事例
では、ある裁判事例をもとに今回のケースのような場合はどのような裁判が行われるのかを見ていきましょう。
被相続人は、被相続人が所有している本件の土地上に請求人の妻との共有の建物を建てておりました。その建物は住居及び妻の事務所として使用していたところ、相続が発生したため、本件の土地を請求人は妻が借地権を有しているとして、「底地」と評価して申告を行いました。
しかし、争いが発生し、審判所は被相続人と請求人の妻との賃貸は認められていないものだとし、請求人の妻が借地権を有しているとの請求人の主張は採用できないとしました。
3.裁判所の判断
この裁判事例では、請求人は以下の理由から、本件土地は妻が借地権を有しているので、「底地」として評価すべきだと主張しています。
・相続開始から、被相続人所有の本件土地上に、妻と共有で店舗兼住宅を新築で建てており、住居及び妻の事業所として利用しているということ。
・妻は、被相続人に対して、権利金及び地代を支払っていたということ。
・本件土地に係わる固定資産税は妻が負担していたということ。
しかし、被相続人と請求人の妻との間の賃貸については以下の問題がありました。
・賃貸借契約書を作成していない。
・権利金及び地代を支払っていた証拠がなく、認められない。
以上のことから、賃貸借であるということは認めることができないため、請求人の妻が借地権を有していたという請求人の主張は採用できないものとされました。
また、請求人が主張していた固定資産税の負担については、被相続人と請求人の妻との賃貸が親族間における使用賃貸であると認められることから、民法第595条に規定する費用負担と考えるのが相当であるとしました。
4.まとめ
いかがでしたか。
今回は夫婦間での土地の賃貸借が認められんなかった事案をご紹介いたしました。被相続人の土地を建物の所有を目的として親族が賃貸借する際は、契約書を作成したり、地代などの権利金の支払い証拠を残したり、あらかじめ相続の対策することが必要です。
不安な方は、弁護士などの専門家に相談してみましょう。