みなさん土地の使用賃借はご存知ですか?
使用賃借や賃貸借との違い、判例などを交えて紹介していきたいと思います。
土地の使用賃借とは
民法601条は賃貸借が使用の賃料を払うのに対し、民法593条は無償による賃借取引です。
一般的に土地を賃借して借主がその土地上に建物を建てる場合、権利金を授受する、地代を払う、土地の使用対価の授受が行われます。
しかし、使用貸借契約は借地借家法が適応されず、民法の593条から600条が適応されます。また、無償で貸し付けているため、使用貸借契約においては、貸主は原則としていつでも借主に対して契約の解除、物の返還を要求することができます(ただし、存続期間が定められている場合、その期間が満了するまでは物の返還を要求できない)。
実際に使用貸借契約は会社と経営者や親子間で締結ことが多く、また契約書が存在せずに、口約束で行われていることが多いのです。例えると、会社の経営者が、個人名義の土地に建物を建築したり、親名義の土地の上に子名義の建物を建築したりします。
判例1
長年倉庫などに使用しても一時使用目的と判断
約20年の期間、土地賃貸借契約に基づき、更新して倉庫・作業所に使っていても一時使用目的であると判断された判例があります。
倉庫・作業所を建築・使用するために締結された土地賃貸借契約につき、約20年の間の期間にわたり更新を繰り返しても一時使用目的であると認定されました。
土地賃貸借が一時使用目的だとどうなるのか
〇土地賃貸借が一時使用目的に該当すると、借地期間などの適応がない
建物所有の土地賃貸借は借地借家法上の借地になります。しかし、土地の賃貸借契約の目的が一時使用目的であることが明確ならば、借地借家法の規定の大半が適応されません。借地ということになりません。そうすると最低期間制限の30年という期間も適応されないのです。
〇一時使用目的の適応条件や判断
一時使用目的という目的がはっきりしている場合だけ、そのルールが適応されるのです。
<適応条件>
短期間に限り賃貸借を存続させる、という合意について客観的・合理的な理由が存在する
<判断要素の例>
・地上建物の種類や構造、設備
・土地の利用目的
・賃貸期間
〇裁判上の和解で短期間の土地賃貸借を合意した場合、原則的に一時使用目的と認められる
裁判上の和解として、1年から数年の土地賃貸借契約の合意をすることがあり、裁判官の関与によって条項を作成し、調書として完成します。
ここで、短期間限定の賃貸借として裁判上の和解が成立していると、一時使用目的として有効です。
他にも様々な条件から一時使用目的と認められる場合と認められない場合があります。
判例2
亡母の死亡により、同人が庭の広い新しい家に住む目的が終了したとして使用賃貸借契約の終了を認めた事例です。
実の母のために貸主に使用賃借を行っていたが、母が亡くなってしまったために母が望んだ庭が広く新しい家に住むという目的に従った利用が終了したことから、使用賃借契約が終了したものと認められました。
一般的な使用賃借契約の終了の理由
先ほども説明いたしましたが、無償で財産を貸すことを使用賃借契約といいます。主に不動産の使用賃借で、その契約はいつ終了するのか、明け渡しを請求できるのかという問題となるケースが多いのです。
<使用賃借契約>
〇597条1項
設定された期間
〇597条2項本文
目的に従った使用・収益終了時
〇597条2項但書
使用・収益に足りる期間
〇597条3項
解約申込
〇599条
借主の死亡
借主の死亡による使用賃借の終了の規定と趣旨・性質
まず、民法の条文は単純に借主の死亡によって使用賃借では、契約が終了するという内容が規定されているだけです。もともと貸主は特定の人に対して、無料で貸すという認識であるのが通常です。そこで、相続で他のものが借主になることを回避できるようになっています。
なおこれは任意規定です。当事者が借主の死亡で終了しないと合意することが可能です。
〇条文の規定
(借主の死亡による使用賃借の終了)
第599条 使用賃借は借主の死亡によって、その効力を失います。
〇趣旨
使用賃借は無償契約で、借主との特別の関係に基づいて貸すのが大部分です。借主を考慮し、貸主に対して貸与したとみるべき場合が多いです。借主の死亡によって相続人に承継されないというのが、当事者の通常の意思であると推定されます。
〇任意規定
この規定は任意規定で、強行規定ではありません。当事者がこれとは異なる内容を合意できます。
〇使用借権の相続(参考)
仮に借主の死亡の際、民法599条が適応されない場合は借主の相続人が借主の地位(使用借権)を承継します。
まとめ
今回は土地の使用賃借について紹介してきました。賃貸借契約と使用賃借契約は全く別物です。裁判事例などによっては判例がたくさんあるので、参考になればと思います。