借地条件の変更は可能?借地権は消滅することもある?

地主から土地を借りる場合、借地条件が設けられていることがあります。

この借地に建てた建物の借地条件は、なんらかの事情がある場合に変更することはできるのでしょうか。

また、借地権は条件によっては消滅してしまうことがあります。一体、どんな条件があるのでしょうか。

今回は、借地条件の変更と借地権の消滅について、判例も交えながらご説明をしていきます。

 

 

建物の老朽化で借地条件の変更は可能?

土地を契約するとき、地主側が不利にならないように増改築禁止や再築禁止など、建物の制限していることがあります。その場合は、地主にあらかじめ許可をとることで、増改築や再築をおこなうことができます。

例えば、借地条件に「非堅固建物(木造など)」とある場合、地主の許可なく堅固建物(コンクリート、鉄筋など)に建て替えることはできません。

非堅固建物が老朽化で堅固建物へ建て替える場合など、地主に許可を得て借地条件の変更をする必要があります。

地主の許可がないまま、勝手に増改築などをおこなうと契約違反となり、地主から契約を解除されることがあります。

 

上記、建物の老朽化について、非堅固建物を堅固建物所有目的に変更できるかという判例をご紹介します。

 

借地上の建物が相当老朽化している場合、堅固建物所有目的への変更は認められるか

(大阪高決平3・12・18判タ775・171)

 

判旨

本件借地権は、近い将来、建物の朽廃により消滅する見込みがあること等、諸事情を総合して、非堅固建物所有目的から堅固建物所有目的への条件変更は相当ではない。

 

事案の概要

Yらの父Aは、Xに対し、昭和26年7月20日作成の公正証書により、以下の条件で、本件土地を賃貸した(以下「本件借地契約」という。)。

 

・借地期間:昭和26年7月1日から昭和46年6月末日まで20年間

・用途:木造スレート葺き工場用建物の敷地

・解除要件:あらかじめ貸主の証書による承諾がない限り、本件土地を前記用途以外に使用すること、本件土地上の建物を債務の担保に供することはできず、違背したとき、及び賃料の支払で一度でも遅滞したときは、無催告で借地契約を解除できる。

 

第一審では、Xの借地条件変更の申立てを認めたため、Yらが即時抗告したものである。

 

裁判所の判断

本決定は、以下のとおり述べて、第一審決定を取り消し、堅固建物への変更申立てを棄却した。

 

まず、Yらが主張する争点である本件建物の朽廃による借地権の消滅(①)については、本件建物が建築後50年以上経過した木造スレート葺き工場であり老朽化していることは認めるが、朽廃に至っていないとして、朽廃による借地権消滅の主張は認めなかった。

 

また、無断増改築、無断担保設定、賃料不払、いずれの債務不履行による借地契約の解除(②)についても、理由はなく認めなかった。

 

そして、裁判所は借地権があることを前提に、以下のように借地条件の変更について判断した。

 

本件土地は、従前は工場地帯であり、中小規模の住宅が混在する地域であったが、近年は堅固な建物であるマンション建築が盛んである。しかし、本件建物は、昭和11年頃に建築されたもので、現実にはかなり老朽化していて、近い将来朽廃する見込みであること、本件借地契約における借地期間は相当長期になっていること、本件土地はもともと工場用建物の敷地として非堅固建物所有目的とする特約があること、本件建物朽廃により借地契約が終了する見込みであるのに、堅固建物を建築すれば借地期間が30年となり、更に30年後には更新される見込みであること等の事実から、非堅固建物の所有目的である本件土地の借地権を、堅固建物の所有目的とする借地権にその借地条件を変更することは相当ではない。

 

よって、Xの本件借地条件変更の申立ては認められない。

 

借地上の建物をめぐる実務と事例(新日本法規出版)より引用しました。

 

 

建物の朽廃は容易には認められない

現在、土地の貸し借りについての法律は、平成4年8月1日から施工された「借地借家法」が適用されています。

平成4年7月31日までは「旧借地法」が適用されていました。それまでに貸し借りをした土地には、この「旧借地法」が適用されます。

 

旧借地法は、地主と借主の間で何年間という契約期間を定めていない場合、

・非堅固建物(木造など) 30年

・堅固建物(コンクリート、鉄筋など) 60年

という法定期間が定められていました。

法定期間で契約をしていた場合、建物が朽廃(古くなって住めなくなるほどの状態)すると借地権が自動的に消滅する制度でした。

地主と借主との間で契約期間を定めていた場合は、建物が朽廃しても、借地権は消滅することが無く、地主からの契約解除を求められることはありません。

契約を更新する場合は、非堅固建物は20年間、堅固建物は30年間の期間が新しく設けられます。

現在の借地借家法では、建物の朽廃で借地権が消滅することはなくなりました。そのため、借地期間内であれば、朽廃しても契約を継続することができます。

 

朽廃は容易に認められるものではありません。

例えば、屋根や柱などの一部に腐食がある場合でも、建物が崩壊する危険性がない場合は朽廃を認められません。なので、「古くなったから朽廃」というわけではないのです。

朽廃は、

・いつ崩壊するかわからないような状態

・長年放置されていて、建物として機能しないほど状態が悪い

・土台や基礎などが全体的に腐食していて、新築と同じような改築費がかかる

これらのような理由が主に挙げられます。

 

朽廃に関して、建物の補修に新築と同じくらい費用がかかる建物は、建物としての機能を失っているため、朽廃と認められたという判例をご紹介します。

 

構造部分に全面的な補修を必要とする借地上の建物は朽廃しているか

(東京高判平5・8・23判時1475・72)

 

判旨

借地上の建物の朽廃本件建物は、建築後約40年が経過しており、全体的に経年による劣化が進んでいるほか、無人のまま長年放置され、保守管理も不十分であったことから、その構造部分にほぼ全面的な補修を行わなければ使用できない状況であり、その補修には新築同様の費用が必要であると推認される。そうすると、本件建物は、既に建物としての社会的、経済的効用を失っており、朽廃が認められる。

 

裁判所の判断

本判決はおおむね以下のとおり判示し、借地権の消滅を認めた。本件建物は、建築後約40年という長期間が経過しており、全体的に経年による劣化が進んでいるほか、無人のまま長年放置され、さらに、元6畳の和室の一部を解体撤去して4畳の和室にした際の補修が十分されないなど保守管理が不十分であったことから、基礎、土台、柱及び屋根といった構造部分にほぼ全面的な補修を行わなければ使用できない状況に至っていることを考慮すると、その補修には新築同様の費用が必要であると推認される。

 

そうすると、本件建物は、遅くとも当審における口頭弁論終結時までには、既に建物としての社会的、経済的効用を失うに至り、朽廃しているので、本件借地権も消滅したと認められる。

 

解説

借地人は、地主から何らかの理由で建築済みの土地を借りました。

その家は建築されてから約40年が経過していましたが、借地人はその家に住むわけでも補修するわけでもなく、長年放置されていました。

裁判所では、部分的な補修をすれば住むことが可能な場合、建物が老朽したと認めていません。今回のケースだと内外装だけでなく、基礎や土台といった構造部分にほぼ全面的な補修が必要になります。補修には新築同様の費用がかかるということで、建物が老朽していると判断し、借地権は消滅したものと認められました。

 

 

まとめ

今回は借地条件の変更と、借地権の消滅についてご説明をしました。

土地を借りているからといって、建物を好き勝手に建てたり改築したりすることはできません。地主に許可を得てからにしましょう。

また朽廃した建物は借地権が消滅することがあります。適用されているのは旧借地法なのか、借地借家法なのかによって変わるため、不安な方は一度弁護士や専門家へご相談をしてみましょう。

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