みなさんは使用貸借と借地権の違いをご存知ですか?
どのような違いがあるのか判例などを交えて紹介していきたいと思います。
〇使用貸借と借地権について
借地権とは
第三者から対価として地代などの支払をして土地を借り、その土地に住居などの建物を建て所有する権利のことであり、地上権と土地の賃借権が一般的に借地借家法に基づく借地権といわれるものにあたります。
土地の使用賃借とは
第三者から土地を借り、その土地に建物を建て所有することですが、使用賃貸は土地の使用の対価としての地代などの権利金の支払いが発生せず借地借家法にも該当しません。
親や親族が所有する土地を無償で借り住居を建てた場合などが該当します。
違いとしては
借地借家法に基づく借地権の場合は、一般的に土地を賃借して借主がその土地上に建物を建て、土地の使用対価としての地代などの権利金の支払いを行います。
対して、使用貸借契約は借地借家法が適応されず、民法の593条から600条が適応されます。
また、無償で貸し付けているため、使用貸借契約においては、貸主は原則としていつでも借主に対して契約の解除、物の返還を要求することができます(ただし、存続期間が定められている場合、その期間が満了するまでは物の返還を要求できない)。
実際には
使用貸借契約は親子間や会社と経営者の間で締結することが多く、また契約書が存在せずに、口約束で行われていることが多いのが特徴です。
例えると親名義の土地の上に子名義で建物を建築したり、会社の経営者が個人名義の土地に法人名義で建物を建築したりすることがほとんどです。
ただし、会社と経営者の間の契約の場合経営者の死亡した場合相続の問題が発生します。
法人と被相続人間の土地の賃貸関係について争いになった裁決事例がありましたので紹介いたします。
事例
土地の所有者の被相続人と法人A社との間における本件土地の貸借関係は、昭和33年から相続開始日まで続いていた。
(1)両者間において権利金及び地代の授受はなかったこと、
(2)A社は本件土地の公租公課を全額負担していたこと、
(3)A社の貸借対照表には本件土地の借地権に関する記載がないこと、
などを併せ考えると、本件土地の貸借関係の実体は私法上の使用貸借であると認められなくもないが、私法上においては、本来「法人」とは営利追及を目的として設立されるべきものであり、そのことから活動はすべて合理的な経済人としての立場から判断されるべきものとの考え方から、前記されている(1)、(2)及び(3)の事実には関係なく、本件土地の貸借が使用貸借の名の下にA社に建物を建築させたという事実があっても、借地権相当額の認定課税が行われていたと認めるのが相当であるから、A社には本件土地の借地権相当額が存在することとなり、本件土地は借地権の設定されていた土地として評価が行われるべきある。
〇借地権の用件、使用貸借の用件
底地とは
借地権を設定している土地のことであり、貸主が土地を貸している権利のことを底地権という。貸主が貸している土地のことである。
借地権なのか使用貸借なのかによって評価は大きく異なってきます。借地権の使用貸借の要件について掲載している裁決の事例がありましたのでご紹介します。
事例の概要
被相続人は、被相続人所有の本件土地上に請求人の妻と共有で建物を建てて、住居および妻の事業所として建物を使用していたところ、相続が発生しました。本件土地を請求人は妻に借地権があると判断したので本件土地を底地として評価して申告したところ、争いになった裁決事例
裁決要旨
請求人は、
(1)相続開始前から、被相続人所有の本件土地の上に、妻と共有で店舗兼住宅を新築の上、住居および妻の事務として利用していた、
(2)妻は、被相続人に対して権利金及び地代の支払いがあった、
(3)本件土地に係る経費の固定資産税は妻が支払いをしていた、
本件の土地は、妻が借地権を持っていると認識し、底地としての評価を行うべである旨を主張する。しかしながら、被相続人と請求人の妻との貸借については、
(1)賃貸借契約についての契約書の作成をしていなかった、
(2)権利金および地代の支払いがあったことは認められない、
以上のことから使用貸借であり賃貸借であるとは認められないので、請求人の妻が借地権を持っているとする請求人の主張は採用できない。
なお、固定資産税の負担については、被相続人と請求人の妻との貸借が親族間における使用貸借であると認められることから、民法第595条に規定されている費用負担と解釈される。
民法第595条 借用物の費用負担とは
①借主は、借用物の通常の必要費を負担する
②第583条第2項【買い戻し権に対する費用償還請求権】の規定は、前項の通常必要費以外の費用について準用する
必要経費とは目的の建物に関しての保存・管理・維持のために必要とされる費用のことであり、本条に該当する通常の必要経費とは、建物の固定資産税などの公租公課や建物を維持するための補修費・修繕のための費用などがあります。
〇借地権は生前対策が必要
借地の相続税額は、宅地価格に借地権割合の80%をかけて計算されます。
その際には、借地契約の更新料も建替え承諾料などの費用は差し引くことはできません。
したがって、土地の間口が広い場合は、固定資産の交換(土地の所有権と建物の所有権)をされたらどうでしょうか。
多くの場合、更新料は更地価額の2%~4%前後、建替え承諾料は更地価額の5%~6%前後です。
生前対策としてできることは、次のことが想定されます。
①地主と借地人が共同して底地・借地権を一括売却し、路線価の安い他の土地の買い替えを行う。
②地主と借地人が底地と借地権を交換して、地主と借地人の立場を入れ替える。
③地主と借地人が共同ビルに建て替え、一部を各自の居住用に、一部を貸家にして家賃収入を得る。
④地主が借地権の買取りを行う。
⑤借地人が地主に一部権利を売却して、その資金で借地上に建物を新築する。
なお、評価通達では宅地価格に借地権割合を乗じますが、その評価額が時価を上回る場合は、鑑定評価では将来発生する更新料を控除しますので、鑑定評価をとることをお勧めします。
まとめ
使用貸借は地代などの支払いがない土地の貸し借りであり対して、借地権は地代支払いがある土地の貸し借りのことです。
使用賃借の場合は借地借家法が適用されませんので借主の権利が保護されない場合がありますので注意が必要です。
借地権には生前対策が必要ですから、借地人は地主と事前に対策を行うことをお勧めします。